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大阪高等裁判所 平成8年(行コ)32号 判決 1997年4月22日

大阪市淀川区東三国一丁目四番一号

控訴人

日生商事株式会社

右代表者代表取締役

平田元塾

大阪市淀川区木川東二丁目三番一号

被控訴人

東淀川税務署長 笹倉達也

右指定代理人

山崎敬二

西浦康文

高橋孝志

森和雄

東京都千代田区霞が関一丁目一番一号

被控訴人

右代表者法務大臣

松浦功

右指定代理人

山崎敬二

西浦康文

主文

一  本件控訴をいずれも棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一申立て

(控訴人)

一  原判決を取り消す。

二  原判決事実及び理由第一同旨

三  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

(被控訴人ら)

主文同旨

第二事案の概要

一  原判決事実及び理由第二記載のとおりであるからこれを引用する(但し、原判決三枚目裏五行目「財務署長」を「税務署長」と、同五枚目表五行目「二年」を「三年」とそれぞれ改め、同六枚目表三行目「本件」の前に「法人税についての」を付加する。)。

二  当審における控訴人の主張

1  本件各修正申告書の代表者自署押印欄(代表者氏名欄)には、控訴人の印鑑(会社印)でなく、代表者個人の認め印しか押捺されていないから、不完全である。

2(一)  控訴人が売却した箕面市半町所在の土地建物の売上代金は、土地が一億一八〇七万円、建物が三一〇〇万円、建物消費税が九三万円合計一億五〇〇〇万円であった(売買契約書、甲一四)のに、本件修正申告においては、土地が八二六四万一〇〇〇円、建物が六七三五万九〇〇〇円合計一億五〇〇〇万円となっており、土地の売却代金を売買契約書記載の金額よりも三五四二万九〇〇〇円減額して申告していることになる。そして、同様のことは、摂津市鳥飼和道の土地建物(売買契約書、甲一七)についてもいえる。

(二)  右は真鍋係官による土地譲渡益重課税を免れるための虚偽申告であり、脱税行為である。

3  控訴人所有の(一)淀川区東三国五-一五-三〇の物件及び(二)西淀川区佃二-一-二八の物件は棚卸資産であるのに、真鍋係官が控訴人をして提出させた本件各修正申告において、同係官が勝手に固定資産に振り替えているのは不当である。

4  真鍋係官が控訴人代表者に示した資料(甲一一。その一部は乙一、二号証の各一、二と同一)において、

(一) 前記3の(二)の物件は空家であるのに、勝手に未収家賃として月額三〇万円一二か月三六〇万円を計上している。

(二) 同物件の修繕費六〇〇万円を勝手に固定資産に振り替えている。

第三証拠

原、当審記録中、書証・証人等目録記載のとおりである。

第四争点に対する判断

次のとおり付加等するほか、原判決事実及び理由第三記載のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決一〇枚目表一行目「一二、」の次に「一四、一七、」を付加し、同一〇行目「六三条の二」から同末行「譲渡に」までを「六三条所定の短期所有に係る土地の譲渡に、その余の土地の譲渡は、同法六三条の二所定の超短期所有に係る土地の譲渡に」と改め、同一一枚目表二行目「超短期所有」と同三行目「短期所有」とを入れ替え、同五行目「淀川区」の次に「東三国」を付加し、同末行「超短期所有」と同裏一行目「短期所有」とを入れ替え、同一二枚目表六行目「可能」の次に「(土地建物が一括譲渡された譲渡対価を、土地と建物(本件修繕費を加算したもの)の各原価によって按分計算する方法による。別表四参照)」を付加する。

二  同裏一〇行目「更正」から同末行「なるので、」までを「とくに土地譲渡益重課税の点に関し、修正申告の場合には、経費額の計算につき、実額配賦法を選択することが可能であるが、更正の場合には、経費額の計算につき、概算法によって計算することになるので、右資料(甲一一)に従って」と改め、同一三枚目表七行目「記載内容」の次に「(その内容は、別表1(3)欄、同二修正申告(調査)欄、同三本件修正申告欄、同四修正申告欄各記載のとおり。)」を付加する。

三  同一四枚目表一〇行目「淀川区」の次に「東三国」を、同裏九行目「対して」の次に「同六三条所定の場合よりも更に一〇パーセント」をそれぞれ付加し、同一五枚目表二行目「短期所有」と同三行目「超短期所有」を入れ替え、同一六枚目表七行目「1一ないし七」を「1(一)ないし(七)」と改める。

第五当審における控訴人の主張に対する判断

一  主張1につき判断するに、国税通則法一二四条一、二項によれば、法人が(修正)申告書を提出する場合には、当該書類に当該法人の名称及び住所又は居所を記載したうえ、当該法人の代表者が押印しなければならないと定めているにとどまり、当該法人の代表者が押印すべき印章につきこれを限定する趣旨の法令の規定はないので、仮に、本件各修正申告書に、控訴人の印鑑(会社印)でなく、代表者個人の認め印が押捺されているとしても、そのことによって右申告書の効力に影響を及ぼすものではない(ちなみに、控訴人の平成二年三月期(平成二年五月三〇日受付)の法人税確定申告書(甲一二)、同(平成三年五月二一日受付)自主修正申告書(甲七)及び平成三年三月期(平成三年五月二九日受付)の法人税確定申告書(甲八)においても、控訴人の印鑑(会社印)は押捺されておらず、代表者個人の認め印らしきものが押捺されているにとどまる。)。

二  主張2及び3について

前記認定事実に甲一四、一七を総合すれば、主張2(一)の事実を認めることができ、また、主張3(一)(二)の物件については、本件各修正申告書において固定資産として処理されている(甲三の二、四の二)けれども、前記認定事実及び弁論の全趣旨によれば、控訴人代表者は、真鍋係官から交付を受けた資料(甲一一、その一部は乙一、二の各一、二と同一)に基づき記載した本件各修正申告書の記載内容につき同係官より説明を受けたうえ、これに署名押印し、自己の意思に基づいて本件各修正申告をしたものであり、本件各修正申告をしたのは控訴人であって真鍋係官ではないのみならず、本件各修正申告は税務当局によって受容されているのであって、前記認定にあらわれた本件各修正申告にいたる経過に鑑みれば、そのような取扱を違法と言わなければならない理由も見出しがたいところであるから、右らの主張は採用することができない。

三  主張4については、真鍋係官が控訴人に示した資料(甲一一。その一部は乙一、二の各一、二と同一)中にはその主張の記載のあることが認められるものの、右記載は平成四年三月期分に関する記載であって、本件各修正申告に関するものではないことが明らかである。

第六結論

原判決は相当で、本件控訴はいずれも理由がないからこれを棄却し、民訴法九五条、八九条を適用して、注文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 富澤達 裁判官 古川正孝 裁判官三谷博司は転補につき署名押印することができない。裁判長裁判官 富澤達)

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